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2004年07月01日

自分の脳の中身を覗いてみる

mybrain

友人が脳の研究をやっているというので,MRIで脳をスキャンしてもらった.

Magnetic Resonance Imaging(磁気共鳴画像法)というのは生体の内部を撮影する技術だ.核磁気共鳴現象(NMR: Nuclear Magnetic Resonance)を利用するため,電離放射線を利用するX線CTのように被爆しないし,分解能が高い.しかも血流の状態が分かる血管造影画像(MRI Angiography)がとれるので閉塞性の脳血管病変も早期に発見できる(とはいっても自分で見ても全く分からないので,もし分かる人いたらぜひ診断してください.クリックすると回転する動画が見られます).

Blood_vessels

MRIは人体の60%以上を構成する水素原子核(byハガレン)の分布を測定したものだ.動作原理はこんな感じ.まず観測対象を強烈な磁場内に配置することでその原子核のスピンの方向を揃える.そこで,ある周波数の電波を照射すると,水素原子核のみが共鳴してエネルギーを吸収する.電波をとめると励起状態が緩和する過程でそのエネルギーが放出されるので,これを観測し,信号の強度と部位を特定するためのフーリエ変換という計算を行い,画像化する.詳しくはこちらでどうぞ.

brain_slice1

それにしても,こんな風に自分の頭のスライスを眺めるのは不思議な気分だ(クリックすると切り口が移動する動画が見られます).何度も見ているうちに,左脳が少し足らなくてちょっと心配になったり,鼻の右の気道がひんまがっているのを見つけて「これがいびきの原因か」などと思わずつぶやいてみたり.他には問題ないかな?

MRI Room

MRIは数テスラもある強烈な磁場を生み出す装置なので,測定室に金属類の持ち込みは一切禁止.明示的に酸素タンク持ち込み禁止と掲示されている理由は,かつてどこかの病院で,呼吸困難の子供を測定する際,うっかり酸素タンクを室内に持ち込んでしまったところ,それが装置に向かって飛んで行き,子供に激突して殺してしまう,という事故があったため.他にも警官が拳銃を腰に付けたまま不用意に測定室内に入って行ったところ,拳銃がホルスターから飛び出して測定器に激突,暴発したなんていう事故も業界では有名らしい.わたしもうっかり腕時計をしたまま室内に入ったら見事に時計が止まってしまった.

MRI Console

被験者の頭を固定する器具に小さな鏡がついていて,測定器の中に入った後もこのMRIのコンソールが見えるようになっている.測定中は全く身動きが取れず,測定器内は暗くて狭いし,電磁石はかなりうるさいし,病気の診断のための測定をする場合だと被験者は特に不安に駆られると思う.測定時間は正味45分くらい.費用はまともに払うと数千ドルらしい.

MRI Server

サーバルームには制御系,測定系のサーバ類が立ち並ぶ.サーバルームはどこに行ってもうるさいし,冷房ががんがん効いているために寒い.ちなみにMRIは測定器としてはかなり高額で,このUCSFに設置されているものでも$5 Millionくらいする.全世界に一万台くらいしか無いらしいが $5MM x 10k = $50Bn の規模と考えればそれなりのマーケットだ.

ところで,無侵襲,無障害で生体内を観察できるなんて,MRIはなんとハードコアな技術だろうと思っていたら,発明者の二人(Paul C. LauterburとSir Peter Mansfield)は昨年のノーベル生理学・医学賞を受賞していた.さすが.

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